ITIL V3 Foundation シラバス V4.3 の要約
ITIL V3 FoundationのシラバスはOGCのWebサイトからダウンロードできます。
現在の最新版は、シラバスV4.3(2010/05)になります。
シラバス V4.3 は11ページほどのドキュメントですが、内容をここに要約しておきます。
詳細は原文を参照ください。
ITILファンデーション資格の目的は、ITILの用語・体系・基本概念を把握し、
サービスマネジメントのためのプラクティスの基本原理を理解しているかどうかを確認することにあります。
シラバスの位置づけ
ITILでは、ITサービスマネジメントをサービスストラテジ、サービスデザイン、サービストランジション、
サービスオペレーション、継続的サービス改善、イントロダクション、用語集として手引きしています。
ITILファンデーションのシラバスは、これらITサービスマネジメントについての理解と技量を向上させることを
目的とした教育コースや教材を開発/利用するための手引きになります。
シラバスは、参照性、拡張性、保守性を考慮して構成されています。
教育コースや教材を開発する際は、自由な裁量により、各ユニットを十分に網羅し、最も適切と考える方法で組み立てて編成してください。
シラバス上のユニットの順序にそのまま従ったコースを組み立てないことを強くお勧めします。
シラバスは、必要に応じて付加価値を付けることができるよう、柔軟に構成されています。
シラバスは、10個のユニットで構成されています。
10個目は前述の9個についての模擬試験を用意しなさいという構成になります。
推奨する学習時間は、模擬試験の2時間を含めてトータル18時間を想定しています。
※このことは、18時間、つまりみっちり2日間学習すれば、ITIL V3 Foundation試験に受かります、ということです。
各ユニットの内容
ここが、いわゆるシラバスの本題です。ユニットごとに学習内容が列挙され、推奨される学習時間が提示されています。
ITIL本(コア書籍)へのインデックスが付いているのですが、この要約では割愛しています。原本を参照ください。
以前のバージョンV3.1(2007版)からの変更部分を赤字、
削除された部分を青字で示しておきます。
主な変更箇所は、以下のとおりです。重要なものを(■)で、軽微なものを(□)でマークしておきます。
- (□)サービスモデル、サービスVモデルが除外された。
- (□)サービスソーシングの種類が除外された。
- (□)運用での相反する要件(矛盾するバランス)が除外された。
- (■)サービスポートフォリオ管理のプロセスとしての扱いは除外された。
- (■)継続的サービス改善の7つのステップが除外された。
- (□)各ステージでのツール導入での要件が除外された。
- (□)ユーザープロファイルが追加された。
- (■)SLAMチャートが追加された。
- (□)サービス資産、リリースポリシーが追加された。
- (■)知識管理のプロセスが明示された。
なお、バージョンV4.2(2009/02版)からV4.3(2010/05版)への改訂では、学習項目に変化はありません。
試験要領について、ネイティブでない言語で受験する場合に
辞書の持ち込みと試験時間の延長が認められる旨が追記されただけです。
学習項目としては、V4.2とV4.3は内容的に同じです。
さらに言えば、V4.0のリリースが2008/12でしたが、この間2年半以上、シラバスには大した変更が行われていません。
安定しています。
ユニット | 学習内容 | 学習時間 |
1 |
プラクティスとしてのサービスマネジメント |
サービスを定義でき、プラクティスとしてのサービスマネジメントの概念を理解し、説明できること。
01-1 | グッドプラクティスの概念 |
01-2 | サービスの概念 |
01-3 | サービスマネジメントの概念 |
01-4 | 機能の定義、プロセスの定義 |
01-5 | プロセスモデルとプロセス特性 |
|
45分間 |
2 |
サービスライフサイクル |
サービスライフサイクルの価値と各プロセスがどのように統合されるかを理解し、
ライフサイクルでの各フェーズの目的とビジネス価値を説明できること。
02-1 | -- removed -- サービスライフサイクルとは |
02-2 | サービスライフサイクルの構成、スコープ、コンポーネントとインタフェース |
02-3 | サービスストラテジのゴールと目的 |
02-4 | サービスデザインのゴールと目的 |
02-5 | サービスデザインがビジネスに与える価値 |
02-6 | サービストランジションのゴールと目的 |
02-7 | サービストランジションがビジネスに与える価値 |
02-8 | サービスオペレーションのゴールと目的 |
02-9 | サービスオペレーションがビジネスに与える価値 |
02-10 | 継続的サービス改善のゴールと目的 |
02-11 | -- removed -- 継続的サービス改善がビジネスに与える価値 |
|
1 時間 |
3 |
概念と定義 |
主要な用語を定義でき、サービスマネジメントの主要な概念を説明できること。
03-1 | 有用性、保証 |
03-2 | リソース、キャパシティ、資産 |
03-3 | サービスポートフォリオ |
03-4 | サービスカタログ(ビジネスサービスカタログ、技術サービスカタログ) |
03-5 | サービスライフサイクル全体を通したITガバナンスの役割 |
03-6 | ビジネスケース |
03-7 | リスク |
03-8 | -- removed -- サービスモデル |
03-9 | サービスプロバイダ(サービスプロバイダの3タイプ) |
03-10 | サプライヤ |
03-11 | サービスレベルアグリーメント(SLA) |
03-12 | オペレーショナルレベルアグリーメント(OLA) |
03-13 | 契約 |
03-14 | サービスデザインパッケージ |
03-15 | 可用性 |
03-16 | サービス知識管理システム(SKMS) |
03-17 | 構成アイテム(CI) |
03-18 | 構成管理システム |
03-19 | 確定版メディアライブラリ(DML) |
03-20 | サービスの変更 |
03-21 | 変更の種類(通常、標準、緊急) |
03-22 | リリースユニット |
03-23 | 変更管理の7つのR |
03-24 | イベント |
03-25 | アラート |
03-26 | インシデント |
03-27 | インパクト、緊急度、優先度 |
03-28 | サービス要求 |
03-29 | 問題 |
03-30 | ワークアラウンド |
03-31 | 既知のエラー |
03-32 | 既知のエラーデータベース(KEDB) |
03-33 | サービスオペレーションにおけるコミュニケーションの役割 |
03-34 | サービス資産 |
03-35 | リリースポリシー |
|
1 時間 |
4 |
原理とモデル |
サービスマネジメントの原理とモデルを理解して説明できること。拮抗する力のバランスを説明できること。
サービスストラテジ |
04-1 | -- removed -- サービス資産が価値創出の基盤となる方法 |
04-2 | サービスを通しての価値創出の基盤 |
サービスデザイン |
04-3 | 人、プロセス、プロダクト、パートナーの重要性 |
04-4 | サービスデザインでの主要な5つの側面の理解
・サービスポートフォリオ設計
・ビジネス要求の識別、サービス要求の定義、サービスの設計
・技術とアーキテクチャ設計
・プロセス設計
・計量設計 |
04-5 | -- removed -- サービスソーシングのアプローチ法と選択肢 |
サービストランジション |
04-6 | -- removed -- サービスVモデル |
サービスオペレーション |
04-7 | -- removed -- 矛盾するバランス
・ITサービス vs 技術コンポーネント
・安定性 vs 反応性
・サービスの品質 vs サービスのコスト
・リアクティブ vs プロアクティブ |
継続的サービス改善 |
04-8 | 品質管理のためのPDCAモデル |
04-9 | 継続的サービス改善モデル |
04-10 | 継続的サービス改善のための計量の意義と、以下の主な要素
・プロセス改善のためのKPIの意義
・ベースライン
・計量の種類(技術計量、プロセス計量、サービス計量) |
|
1 時間30分 |
5 |
プロセス |
サービスライフサイクルに各プロセスがどのように寄与しているかを理解すること。
5つのコアプロセス(■)と残る13のプロセス(□)について説明できること。
サービスストラテジ |
05-21 | □需要管理について、目的、基本概念を説明できること。以下を網羅すること。
・サービスの需要管理
・活動ベース需要管理(事業活動パターン:PBA)
・事業活動パターンとユーザープロファイル |
05-22 | □財務管理について、目的、基本概念を説明できること。以下を網羅すること。
・ビジネスケース |
| ※以前あった「サービスポートフォリオ管理」は独立したプロセスとしては除外されたようだ。 |
サービスデザイン |
05-31 | ■サービスレベル管理(SLM)について、高レベルの目的、基本概念、プロセスの活動と関連を説明できること。以下を網羅すること。
・サービスベースSLA
・マルチレベルSLA
・サービスレベル要求(SLR)
・SLAMチャート
・サービスレビュー
・サービス改善計画(SIP)
|
05-41 | □サービスカタログ管理について、目的、基本概念を説明できること。
|
05-42 | □可用性管理について、目的、基本概念を説明できること。以下を網羅すること。
・サービス可用性
・コンポーネント可用性
・信頼性(Realiability)
・保守性(Maintainability)
・サービス性(Serviceability) |
05-43 | □情報セキュリティ管理について、目的、基本概念を説明できること。以下を網羅すること。
・セキュリティフレームワーク
・情報セキュリティポリシー
・情報セキュリティ管理システム(ISMS) |
05-44 | □サプライヤ管理について、目的、基本概念を説明できること。以下を網羅すること。
・サプライヤ契約データベース(SCD) |
05-45 | □キャパシティ管理について、目的、基本概念を説明できること。以下を網羅すること。
・キャパシティ計画
・事業キャパシティ管理
・サービスキャパシティ管理
・コンポーネントキャパシティ管理 |
05-46 | □ITサービス継続性管理について、目的、基本概念を説明できること。以下を網羅すること。
・事業継続性計画
・事業継続性管理
・ビジネスインパクト分析
・リスク分析 |
サービストランジション |
05-51 | ■変更管理について、高レベルの目的、基本概念、プロセスの活動と関連を説明できること。以下を網羅すること。
・変更要求の種類
・変更プロセスのモデルとワークフロー
・標準の変更
・修正計画
・変更委員会/緊急変更委員会 |
05-52 | ■サービス資産/構成管理(SACM)について、高レベルの目的、基本概念、プロセスの活動と関連を説明できること。以下を網羅すること。
・構成モデルとは
・構成アイテム(CI)
・構成管理システム(CMS)
・確定版メディアライブラリ(DML)
・構成ベースライン |
05-61 | □リリース/展開管理について、目的、基本概念を説明できること。 |
05-62 | □知識管理について、目的、基本概念を説明できること。以下を網羅すること。
・DIKW(データ・情報・知識・知恵)とサービス知識管理システム(SKMS) |
サービスオペレーション |
05-71 | ■インシデント管理について、高レベルの目的、基本概念、プロセスの活動と関連を説明できること。 |
05-72 | ■問題管理について、高レベルの目的、基本概念、プロセスの活動と関連を説明できること。 |
05-81 | □イベント管理について、目的、基本概念を説明できること。 |
05-82 | □要求実現(Request Fulfilments)について、目的、基本概念を説明できること。 |
05-83 | □アクセス管理について、目的、基本概念を説明できること。 |
継続的サービス改善 |
05-9 | -- removed -- 以下について、高レベルの目的、基本概念、プロセスの活動を説明できること。
・7 つのステップの改善プロセス |
|
8 時間 |
6 |
機能 |
4つの機能(■)について説明できること。
06-1 | 以下について、役割、目的、組織構造を説明できること。
■サービスデスク機能 |
06-2 | 以下について、役割、目的、組織上の重複を説明できること。
■技術管理機能
■アプリケーション管理機能
■IT運用管理機能(IT運用コントロール管理、施設管理) |
|
1 時間 |
7 |
役割 |
サービスマネジメントの主要な役割と責務を説明できること。
07-1 | 以下の役割と責務が説明できること
・プロセスオーナ
・サービスオーナ |
07-2 | RACIモデルを認識し、組織構造の決定においてその役割を説明できること |
|
30分 |
8 |
技術とアーキテクチャ |
以下を理解すること。
08-1 | -- removed -- 技術統合での一般的な要件 |
08-2 | サービス自動化によるサービスマネジメントプロセスの統合支援 |
|
※他のユニットに含めること |
9 |
ITIL資格の枠組み |
以下を説明できること。
09-1 |
・ITIL資格の枠組み
・中間的な2 つの流れの区別
・ITILエキスパート、ITILマスタについて
・知識を深めるための他のオプションについて
|
|
15分 |
10 |
模擬試験 |
ファンデーション試験に合格すること。
10-1 | ファンデーション模擬試験を1 回以上受験すること |
|
2 時間 |
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